今話題のメタバースとは? VR・ARを活用したビジネスについて

著者: Sample Author 22/03/31 12:06

最近、メタバースの話をあちこちで耳にする。

 しかし、メタバースは新しいアイデアではない。この言葉自体は何十年も前から使われてきた。仮想現実(VR)、拡張現実(AR)、3Dコンピューティングといった背景技術に至っては、さらに長い歴史を持つ。この分野の進化を現実世界に適用しようとする動きは何年も前からあり、現在のブームはその1つのピークにすぎない。

Technician using visual reality headset in server room

過去のブームとの違いは、人々の認識が変化したこと、つまりインターネットを再考する必要性を多くの人が認識するようになったことだ。しかし、この変化がどこまで大規模な変革につながるかを見通すことはできない。結局のところ、メタバースへのロードマップはまだ道半ばだ。これが約束通りに完成するかどうかも分からない。

 確かなのは、利益を得る機会を大企業は見逃さないということだ。Microsoft、Meta、Qualcomm、NVIDIA、Valve、Epic Games、HTC、Appleらは皆、オンラインで繋がる新しい方法を模索している。各社がメタバース関連のプロジェクトを単独で推進するか、他社と連携するかは不明だが、今後数年にわたって、メタバースの話題はますます増えることになるだろう。

 

1.メタバースとは何か

 残念ながら、メタバースはまだ漠然とした概念だ。メタバースはインターネットの進化形であり、アバターを介して人々が交流したり、仕事をしたり、遊んだりできるオンライン空間だと言われることが多い。これは共通された空間であり、いつでも好きなときに利用できる。Zoomのように、用が終わったら消えることもない。メタバースという言葉が指すものは非常に広い。「Roblox」や「マインクラフト」、「フォートナイト」といったマルチプレイ可能なゲームが生み出す2Dのデジタルワールドをメタバースと呼ぶ人もいる。約20年の歴史を持つソーシャル&ゲームプラットフォーム「Second Life」はメタバースの先駆けであり、今も多くのユーザーを持つ(そして強化される見込みだ)。

 Metaの最高経営責任者(CEO)Mark Zuckerberg氏やMicrosoftのCEO、Satya Nadella氏をはじめとする推進派は、VRヘッドセットやモバイル機器、PC、クラウドに接続されたサーバーといった既存の技術を組み合わせることで、より深く没入感のある体験を生み出そうとしている。こうした未来主義者たちが構築しようとしているのは、ヘッドセットやARグラスを装着してアクセスする3Dの仮想世界だ。VRやARを介さなければメタバースにアクセスできないわけではないが、両者が密接な関係にあることは間違いない。未来のヘッドセットはさまざまな機器やサービスとの互換性を持つことになるだろう。2022年はMeta、ソニー、Appleなどから、VRや複合現実(MR)のヘッドセットが続々登場するとみられている。

メタバースのイメージ
提供:James Martin/CNET
 
 

 各社のプロジェクトに共通しているのは、現実世界と似た仮想世界を作ろうとしていることだ。デジタル化された町、公園、クラブなどが1つの仮想世界に、または多くの仮想世界に出現する。メタバースを物理的な世界と重なって表示されるもの、ARオーバーレイを含むものだと捉える人もいる。投資家たちはすでに大金を投じて仮想世界の土地を買いあさっている。カリブ海の島国、バルバドスがメタバースに大使館を設置する計画を発表したことも、メタバースの可能性を浮き彫りにした。

 一方、否定論者たちはZuckerberg氏らが描く青写真に懐疑的だ。特に、メタバースを堪能するためにはかさばるヘッドセットを装着しなければならない点が問題視されている(ゲーム機「PlayStation」の生みの親はヘッドセットを「わずらわしいだけ」と切り捨て、Metaの上級幹部は自社のヘッドセットを「お粗末」と表現した)。大手テクノロジー企業は今ですらウェブ上のヘイトスピーチや誤情報、いじめといった問題を制御できていないのに、さらに自由度が高まるメタバースでは、問題への対応はさらに困難になるというが否定派の主張だ。

 

2.メタバースは1つか、それとも複数か

 この問いへの答えはまだ分からない。今のところ、メタバースには標準規格がないため、多くの企業が他社よりも早く、未来の標準となるような土台を作ろうと競い合っている。Meta、Microsoft、ソニー、Epic Games、そして多くの中小企業が先行者利益を得るためにさまざまなプロジェクトを進めている。各社のVRヘッドセットが、他社の展開するマルチプレイ型の広大なワールドやクラウドベースのグラフィックと互換性を持つことになるかは分からない。ほとんどの企業は、他社もアクセスできるメタバースを作ると約束しているが、具体的な連携の方法についてはこれから合意を形成する必要がある。

 膨大な金額をメタバースプロジェクトに投じようとしているMetaは、相互運用性が不可欠だとしている。つまり、Facebookで作ったアバターはMicrosoftのプラットフォームでも使えなければならない。これが示唆しているのは、1つのメタバースだ。現状では、「フォートナイト」で買ったスキンは同ゲームでしか使えず、別のプラットフォームに持ち出すことはできない。

 1つの大きなメタバースが存在し、その上でさまざまな企業がサービスを展開するというビジョンは、インターネット黎明期のユートピア的な理想を彷彿とさせる。しかし、当時のインターネットの開拓者たちはそろばんをはじき、投資に見合う利益が得られないと悟ると、この賭けから手を引いた。同じことがメタバースでも起きる可能性はある。Zuckerberg氏らが正しいとすれば、プラットフォームを超えた移動や持ち運びを実現するためには莫大な投資が必要になる。

 メタバースは(あくまでもわれわれの推測では)メタバースを名乗る複数のプラットフォームの集合体として始まるだろう。インスタントメッセージングが生まれたころは、いくつものサービスが乱立し、てんでに運営されていたことを思い出してほしい。それと同じような状況だ。時がたつにつれて標準規格が生まれ、大手企業が互換性のある技術を使うようになり、Eメールのプロトコル的なものが生まれる。大まかに言えば、これが現在のインターネットの姿であり、合意されたプロトコルと独自の基準が対立し、無数の企業がコンテンツを生み出し、競合するソフトウェアエコシステムが共存している。

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3.メタバースはどのような世界になるのか

 

 ヘッドセットを必要とするようなリッチな「メタバース」が想定しているのは、没入感のある360度のデジタル世界だ。ユーザーは自分でデザインしたアバターを持ち、デジタル資産を所有する。所有権はブロックチェーンに記録されることになるだろう。デジタル世界に土地を購入し、バーチャルな家を建て、友人(少なくとも友人のアバター)を招いてもてなすことも可能になるかもしれない。

 これを絵空事だ、ばかげていると思う人もいるかもしれないが、デジタル世界の土地を買って一儲けしようという動きはすでに始まっている。カナダの投資会社Token.comは250万ドル近くを投じて、「ジオシティーズ」やSecond Lifeの流れを汲む3Dプラットフォーム「Decentraland」の仮想資産を手に入れた。Decentralandでは、資産の売買はイーサリアムのブロックチェーンを利用するトークンを介して行われる。

 不動産よりも体験を求める人もいる。例えば「Roblox」や「フォートナイト」では、メタバースの簡易版と言えるような体験ができる。これらのゲームはZuckerberg氏が描くメタバースほどの没入感はないが、未来を垣間見る機会を与えてくれる。

 人々がインターネット上で行っている活動はすべて、メタバースでも実現する可能性がある。ちょっとしたゲーム、Zoomを利用したテレプレゼンス、刺激的なVRやAR、いくつものソーシャルメディア。これらを組み合わせて、楽しさや便利さを実現しようとする試みがあちこちで展開されることになるだろう。

 

4.メタバースにアクセスするために必要な装備は何か

 この質問への答えは、どのメタバースを目指すかによる。Metaは同社のVRヘッドセット「Meta Quest 2」の売り込みに余念がない。このヘッドセットは300ドル(日本では税込3万7180円~)するが、オールインワン型なので別途PCやゲーム機を用意する必要はない。VRヘッドセットは他にも多くの企業から出ている。例えばValve、HTC、HP、ソニーは、PCやPlayStation 4/5で動作するヘッドセットを販売中だ。年内にはさらに多くのヘッドセットが登場し、その一部はスマートフォンと連動するようになるだろう。

Oculus Quest 2
提供:Scott Stein/CNET

 この他、MicrosoftやMagic Leapが製造するARヘッドセットもある。ARヘッドセットは、現実世界にデジタル情報を重ねて表示するもので、比較的高額だ。Qualcommなど、複数の企業がARグラスとスマートフォンを連携させる方法を編み出そうとしているが、これまでのところ、ほとんどのアプリケーションは実験的なものかビジネスに特化したものにとどまっている。SnapのARグラスや、「NrealLight」のようなスマートグラスを見る限り、多くの人が購入を検討するようになるまでには、まだ多くの作業が必要となりそうだ。

 「Roblox」や「マインクラフト」のような既存のメタバースは、PCやタブレット、スマートフォンからもアクセスできる。360度の没入体験は望めないが、現在の人気ぶりを見る限り、魅力的なプラットフォームであることは間違いない。

 

5.メタバースはどこから来たのか

 「メタバース」という言葉が最初に使われたのは、1992年にニール・スティーヴンスンが発表した小説「スノウ・クラッシュ」の中だ。主人公のピザ配達員は、オンラインの仮想ファンタジー世界に入り浸っている。2011年には、オアシスという名のメタバースに人々が集う世界を描いたアーネスト・クラインの小説「ゲームウォーズ」(原題「Ready Player One」)が発表された。この小説はFacebookのVRヘッドセット「Oculus Rift」の誕生にも影響を与えている。

 現実世界では、2003年にLinden Labが仮想世界「Second Life」の運営を開始する。自動車会社やレコード会社、コンピューターメーカーがそして米CNETも)この世界にバーチャルな拠点を開設した。Second Lifeは大ブームを巻き起こし、人気は徐々に低下したものの、今も運営されている。

 「Minecraft」「Roblox」「フォートナイト」などのゲームもメタバースと呼ばれる。「フォートナイト」は人気シューティングゲームだが、ラッパーのTravis ScottやポップスターのAriana Grandeがワールド内でコンサートを開催し、注目度がさらに高まっている。「フォートナイト」は国際的な音楽ショー「Soundwave Series」も開催しており、エジプトやマリ、日本からもミュージシャンが参加している。この3つのゲームの共通点は、プレイヤーが世界を創造できることだ。これはメタバースという概念の肝でもある。

 コロナ危機が始まって2年、私たちは「バーチャル」の再定義を求められている。未来を見通せる人はいないが、仮想空間に大勢の人が集まることの意味を捉え直す試みは着々と進んでおり、この新たな市場の最初の覇者となるための競争が世界中で繰り広げられている。

 

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